Archive for 2月 2010

シェルスクリプトの復権

先日開催された OSC2010 Tokyo/Spring の会場で、ちょっと面白いブースに出会った。usp lab. という企業の出展なのだが、特定のオープンソースシステムなどを展示しているわけではない。この会社では UNIX/Linux 環境であれば間違いなく標準搭載されているシェルスクリプトや sed、awk を駆使することで、企業の業務システムなどを開発して実際に運用しているという。会場では成城石井の在庫管理システムと同等のものをデモしていた。このシステムは Web アプリケーションとして実装されているので、サーバサイドの実行環境は直接見えないが、確かにシェルスクリプトと sed、awk だけで動いているという。その昔、sed と awk で電子メールをベースとした回覧板システムを試作した経験のある身としては、そんなやり方が今でも実務の現場で使われていることにとても興味を惹かれた。担当者によるとハードウェアの高性能化によって、シェルスクリプトだけでも相当複雑な処理をストレスなく実行できるようになったという。3月にはこの会社主催の事例勉強会があるので、参加してみようかと考えている。

この会社の名前と URL は次の通り。

有限会社ユニバーサル・シェル・プログラミング研究所
http://usp-lab.com/

インターネットが死ぬ日 — そして、それを避けるには

「インターネットが死ぬ日 — そして、それを避けるには」(ジョナサン・ジットレイン 著、井口耕二 訳、ハヤカワ新書)を読了。早川書房の発行に加えて、そのタイトルからも何か SF 小説的な雰囲気のものを勝手に想像して購入したが、実際の内容はだいぶ異なっていた。本書では法学者である著者が、インターネットやパーソナルコンピュータの技術と社会の関係性を、法律と技術の両面から緻密に分析している。著者によればインターネットやパーソナルコンピュータの技術革新が飛躍的に進んできたのは、これらの技術が様々な規制や約束事を先送りしてきたことで、オープン性が維持され玉石混淆とはいえ無数のソフトウェアが生み出された。そのことによってオープンで「生み出す力が満ちている肥沃な」道具や環境が瞬く間に普及した。しかし一方で、これらの技術が爆発的に社会へ普及することで、ウィルスやネット犯罪などの危険性が認知されだすと、人々は iPhone に象徴されるような、便利で安全だけれども生み出す力が乏しい道具で満足するようになる、と言っている。そして政府や企業にとっても、生み出す力が満ちている肥沃な道具よりは、自らの管理の影響を及ぼしやすい、便利だけれども生み出す力の乏しい仕掛けが望ましい。しかし筆者はもちろん生み出す力を手放してはいけないと主張していて、そのための方策について本書の1/3以上を割いている。

iPhone が「生み出す力」を持たない道具かどうかは議論の分かれるところと思うが、その気になればなんでも出来そうな無垢のPCと規制のないインターネットの組み合わせに対峙する象徴的なシンボルとしては理解できる。本書では米国の法律に関する記述が多くて理解出来ない部分も多々あったのだが、それでも「生み出す力」とか「肥沃なインターネット」という表現が非常に印象的で記憶に残った。

パート1 肥沃なネットの興亡
第一章 箱の戦い
第二章 ネットワークの戦い
第三章 サイバーセキュリティと生み出す力のジレンマ
パート2 失速後の世界
第四章 生み出す力のパターン
第五章 ひも付きアプライアンス、サービスとしてのソフトウェア、そして万全なる執行
第六章 ウィキペディアに学ぶ
パート3 対策
第七章 インターネットを死なせない — 肥沃なインターネットの安定
第八章 肥沃な未来を実現する戦略
第九章 生み出す力のリスクに対応する — プライバシー2.0

ネットがあれば履歴書はいらない — ウェブ時代のセルフブランディング術

「ネットがあれば履歴書はいらない — ウェブ時代のセルフブランディング術」(佐々木俊尚 著、宝島新書)を読了。Blog や Twitter などのソーシャルメディア・サービスを活用して、自分自身のことを広くかつ正確に知ってもらおうという話。いわゆるセルフブランディングとか自己プロデュースをネット空間上で積極的に仕掛けていくことで、人脈やキャリアの枠を広げていくことが出来るという。佐々木氏の以前の著作である「仕事するのにオフィスはいらない」では、特定の会社組織に帰属しない自立的なノマドワーキングを提唱していたが、本書に書かれているようなセルフブランディングも、ノマドワーキングを実現するための具体的なノウハウのひとつということになるだろう。もちろんノマドワーキングとかセルフブランディングのスタイルが社会の中で完全に認知されるまでには、まだしばらく時間が掛かると思う。しかし自分のようにすでに自営業としてひとりで活動している身にとって、本書に記載されている様々な手法はすぐにでも実践しなければならないと感じると同時に、ネット上に公開する自分自身の情報を自分の手で的確に操作し管理する技術を、早急に身につけなければならないと思った。

第一章 「会社の名前で仕事をする」時代は終わった
第二章 ウェブ上でセルフブランディングする
第三章 ソーシャルメディアで人脈を拡げる
第四章 ツイッター超活用術
第五章 ウェブサービスの利用法
第六章 情報はどの程度までさらすべきか