Google 社が無償提供している Google Apps の Standard Edition は、一般企業だけでなく NPO や NGO のような組織体、同窓会や趣味のサークル団体などでも利用すれば、メンバー間のコミュニケーションを活性化するだけでなく、事務作業のコストと時間を大幅に節約できる可能性がある。
Google Apps では独自のドメインを使って Gmail やカレンダー、Docs などの機能を利用できる。また、シンプルながらも良く出来た CMS である「サイト」機能を使えば、手軽にホームページを公開することができる。しかし、この「サイト」は誰にでも使いやすい反面、凝ったデザインのホームページや CGI のような Web アプリケーション的要素が少しでも入ったホームページの制作は困難である。そのためせっかく Google Apps を使いながらも、ホームページ公開だけのために別の Web サーバが必要になるかもしれない。
これではもったいないので、Google Apps の環境でも従来のように自由にホームページを公開するため、Google App Engine (GAE)を利用する方法を考えてみた。app.yaml ファイルを static_files や static_dir のような静的ハンドラだけで定義してしまうやり方である。
例えば top_dir ディレクトリを GAE 用アプリケーションのトップディレクトリとして、HTML ファイルやイメージファイルなどを次のように配置したとする。
top_dir/app.yaml
top_dir/static_dir/img/logo.png など
top_dir/static_dir/index.html など
この例の場合であれば app.yaml を次のよう定義する。
application: your-app-id
version: 1
runtime: python
api_version: 1
handlers:
– url: /img
static_dir: static_dir/img
– url: /
static_files: static_dir/index.html
upload: static_dir/index.html
– url: /(.*)
static_files: static_dir/\1
upload: static_dir/(.*)
このようにしてから appcfg.py update top_dir コマンドを実行すれば、HTML ファイルなどがデプロイされる。あらかじめ Python と GAE SDK がインストールされていれば、GAE のことを意識せずに ftp のような感覚でファイルの更新ができると思う。この場合 Python は appcfg.py コマンドを実行するためだけに使われる。
デプロイしたものに your-app-id.appspot.com でアクセスできることを確認したら、Google Apps のダッシュボードで GAE アプリケーションを追加して適当な URL を割り振れば、Google Apps 環境だけで自由なデザインのホームページを公開することができる。
実際にこのやり方で作ってみたのが次のページ。ここでは teshigoto-lab.net というドメインで Google Apps を利用している。
Google Apps を使ってみよう!(http://www.teshigoto-lab.net/)
ちなみに同じようなページを Google Apps 標準の「サイト」機能でも作ってみた。こちらは favicon.ico が Google Apps オリジナルデザインのものになっている。
「サイト」版 Google Apps を使ってみよう!(http://google-apps.teshigoto-lab.net/)
「サイト」版は途中で面倒になってしまい、スタイル適用や画像ファイルへのリンク設定をしていない。したがって実際はもう少しまともなデザインにすることができるはずだ。
このサンプルページのようにシンプルなデザインであれば「サイト」機能だけでも何とか出来そうだが、もっと凝ったものになってくると GAE を使ったほうが楽だろうと思う。また、GAE には履歴管理機能があるので、これを使って複数リビジョンのホームページを簡単に切り替える、といったことも可能になる。
ところで最近、Google 社のサイトにおいて Standard Edition 用の申込み画面を見つけるのが極めて困難になっている。以前はそれほど深くない階層のところに他の Edition との機能比較表が掲載されていて、そこから簡単に申込み画面へ行き着けたのだが、その比較表は見つけられなくなってしまった。現状ではあたかも有料の Premium Edition しか存在しないように見える作りになっていて、一旦は Premium Edition の申込みボタンを押してからでないと Standard Edition の申込み画面に行き着けないようだ。
恐らく Premium Edition に比重を移して、Standard Edition は廃止の方向に持って行くつもりなのだろう。それは仕方がないことだと思う。しかし機能制限があっても構わないので、Standad Edition よりも安価(2,000円/1アカウント・1年くらいか?)な Edition も用意してもらえるとうれしい。